夫からの「今日も遅くなる。夕飯いらない」という、普段なら「ラッキー!」と叫んでポテチを主食にするレベルの通知から。
しかしその日は、なぜかそれだけでは心が満たされなかったのです。
ふと思い立って開いた出会い系の既婚者専用掲示板。
そこには「癒やされたい」「秘密の共有」「まずはランチから」といった、建前と本音が絶妙にブレンドされた書き込みが並んでいます。
そこで目に留まったのが、ハンドルネーム『たけし(仮)』さんの投稿。
「仕事帰りに美味しいビールを飲める方。愚痴は少なめ、笑いは多めで。」
このほどよく力が抜けた感じに惹かれ、私は気づけばメッセージを送っていました。
トントン拍子に話が進み、待ち合わせは某都心部の駅。
私は「今日は美容院のついでなの」という自分への言い訳を完璧に作り込み、普段は自転車のチェーンで汚れそうだから避けているパステルカラーのスカートを召喚しました。
「〇〇さんですか?」 声をかけてきたのは、写真よりも少しお疲れ気味でも目元に優しそうなシワを蓄えた、
いかにも「中間管理職で頑張ってます!」という感じの男性でした。
私よりも年上で、お父さん感が強い!!(笑)
「はじめまして。たけしです。……実物、めちゃくちゃお綺麗で今すぐ逃げ出したいくらい緊張してます(笑)」
この相手を立てつつ自分のハードルを絶妙に下げる高等テクニック。
さすが、数々の荒波を乗り越えてきた既婚男性です。
私も負けじと「私の方こそ、お腹が空きすぎて倒れそうです」と可愛げよりも食欲を優先した返信で応戦。
「いやぁ、本当に既婚者掲示板って、最初は怖いものかと思ってました」
「分かります。私も、変な壺とか買わされたらどうしようって思ってました」
そんな冗談を交えながら、会話は進みます。お互いに「家族の愚痴」は最小限にするのがこの世界のルール。
「最近、家で『パパ』とか『ママ』としか呼ばれないですよね」
「わかります。自分の名前、久しぶりに認識しましたよ」
そんな、切実すぎる「個人」としてのアイデンティティの欠乏を語り合っているうちに、お酒の力も相まって空気は徐々にしっとりとしたものへ変化していきました。
「……この後、少しだけ二人で過ごしませんか?」
「門限、ちょっとだけなら破ってもいいかもしれません」
まぁ、既婚者掲示板で会った大人の男女なら当たり前の展開。
この日は結局ワンナイトして何度も彼とセックスしました。
一回りくらい年上の彼は、想像通り濃厚なやつ。
長すぎるくらい丁寧な前戯をしてくれて満足した夜でした。
始発で帰宅。
家に着き、静かに鍵を開けるとリビングには夫が脱ぎ散らかしたままの靴下が一本。
「……ただいま」 小さく呟き、私はその靴下を洗濯機に放り込みました。
私はいつも通り、少し焦げたトーストと目玉焼きを並べ夫を送り出しました。
スマホの中の掲示板の履歴は、すでに削除済み。
たけしさんとの一夜は、誰にも知られない、私だけの「心のサプリメント」として、胃の中に溶けて消えていきました。
一期一会の出会い。
それがワンナイトのルールだからね。
※婚外活動に関しては、基本的にtinderとJメールの(既婚者掲示板)のみ推奨しています。
その他のアプリや出会い系やライン登録系は使ってませんので・・・。あしからず。
・Jメール掲示板(https://mintj.com/)
・ティンダー(https:://tinder.co.jp)

